開催レポート

    クリエイター体験講座 22日
  • Program1

    『プラネテス』と『コードギアス』の脚本を書いてみよう!~まずはBパートだけだけどね~

    大河内一楼(脚本家)

     アニメの第一線で活躍中のクリエイターを講師に招いて開講されたクリエイター体験講座。脚本の講義を担当したのは『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズや『革命機ヴァルヴレイヴ』等のヒット作を多数手がける脚本家の大河内一楼さん。まず大河内さんが受講者に伝えたのは「アニメの脚本は、チーム戦だ」ということ。アニメは多くのクリエイターが力を結集して作り上げるもの。その設計図となる脚本は、決定稿に至るまで何度も練り直され、試行錯誤を繰り返すことになる。そうして完成した脚本の中には、クリエイターの情熱と苦悩と、創意工夫が詰め込まれている。
     講義は、大河内さん脚本による『コードギアス 反逆のルルーシュ』第6話と『プラネテス』第1話を題材に、各シーン、各カットに込められた脚本の意図や狙いを細やかに解説しつつ、リアルタイムにシナリオを読み解いていく形で進められた。解説は具体的かつ実践的で、大河内さんが日々の創作で培ったノウハウやテクニックが惜しげも無く披露された。「思いついたアイデアを脚本に落とし込む方法」「キャラクターを魅力的に描くには」「AパートとBパートが持つそれぞれの役割」「観る側の感情の流れを常に意識すること」「各話シナリオとシリーズ構成の意識の違い」「文字情報のみの小説とアニメの特性の違い」など、その内容は多岐に及んだ。大河内さんの視点から脚本を分析していく中で見えてきたのは、脚本家が持つべき"目線"と"思考法"。「すべてのシーンや描写には、必ず意味が込められています。シナリオを内容ではなく、構造で捉える。それを分析しながら観るだけでシナリオの技術的な部分は学べるはずです」と語る大河内さん。
     受講者は事前に両作品いずれかのBパートの脚本を提出しており、講義の中で大河内さんによる各脚本への寸評も行われた。また講義の最後には質問コーナーが設けられ、受講者から熱のこもった様々な質問が飛び出した。その中で特に印象に残ったのは「自分の書いた脚本が100%映像に反映されることはあるか」という質問。大河内さんはこう答えた。「アニメの脚本の面白さは、他の人の手が加わることで自分の想像以上に、さらに広く豊かに世界が広がること。『プラネテス』も『コードギアス』も、間違いなく僕の脚本より本編の方が面白い。それが楽しくて僕は脚本の仕事を続けています。人と組むことは、100%から減ることじゃないんです」と。

    原稿執筆:星 徹哉

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  • Program2

    『アルドノア・ゼロ』『Fate/Zero』で学ぶ演出講座

    あおきえい(監督)

     クリエイター講座/演出クラスの講師として登壇したのは『劇場版 空の境界』や『Fate/Zero』、また今夏放送のオリジナルロボットアニメ『アルドノア・ゼロ』を手がけるあおきえい監督。講義はアニプレックス・高橋祐馬さんとのトークセッションの形で進められた。
     講義は、あおき監督が監督のポジションに至るまでの道のりの話からスタート。制作進行からデジタル撮影、そして演出を経て監督にキャリアアップするまでの道程を、当時あおき監督が感じた挫折や戸惑いを含めて、リアルに語ってくれた。監督が最初に挫折を感じたのは、演出として絵コンテを切り始めたとき。「見たい映像、作りたいストーリー、描きたいキャラクターのイメージはあるのに、その理想に辿り着けない。実力不足で、抱いているイメージを絵コンテに落とし込むことが出来なかったんです。自分の理想と現実の実力とのギャップに打ちのめされました」そんな挫折を乗り越えるための解決策は、"それでもひたすら絵コンテを切り続けること"。「出来ないのが自分なんだと認めるしかない。言い方は悪いですが"未完の傑作よりも、完成した駄作"なんです。作品を完成させないと、気付きも成長もない。そこに反省があれば次に繋がる。成長するためにはそれを繰り返すしかないんです」とあおき監督。
     アニメ監督として、初めてのオリジナル作品&ロボット物という2大挑戦に挑む『アルドノア・ゼロ』の制作にも話は進み、ゼロから物語を紡ぎ上げる難しさと醍醐味、創作の楽しさを語ったあおき監督。受講者から面白い作品を作るための秘訣を質問された監督はこう答えた。
    「面白さの感じ方は人それぞれで正解はありませんが、少なくとも自分の中に"面白い"の基準を持っておくこと、それが大事だと思います。他の人の意見を取り入れながらも、"ここだけは譲れない"というポイントを持っておくこと。それがその人の個性になると思うんです」
     講義の最後に、受講者にある課題が課された。配られたのは『空の境界1/俯瞰風景』と『Fate/Zero』24話の1シーンのシナリオと登場キャラクター設定、そして絵コンテ用紙。これらで実際に絵コンテを切ってみるという課題。「脚本を読み込んで、脚本が描きたい世界を忠実に映像化することが大事」とアドバイスをくれたあおき監督。後日、筆者も絵コンテ作りに挑戦し、そのあと1つの解釈(模範解答)として配られたあおき監督の絵コンテを拝見して驚かされた。そこには、脚本の行間を補完し、世界を豊かに描き出す膨大なイマジネーションが詰め込まれていた。これは"忠実"な映像化なんかじゃない。そして改めて感じた。やっぱり、アニメーションは面白い。

    原稿執筆:星 徹哉

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  • Program3

    「あの花」を使ったアニメーター講座

    田中将賀(キャラクターデザイン&総作画監督)

     アニメーター講座の講師は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『とらドラ!』のキャラクターデザイン&総作画監督を担当した田中将賀さん。また『あの花』の宣伝担当のアニプレックス・鈴木健太さんが登壇し、講義の司会進行役を務めた。
     高校時代からマンガ家を志し、大手出版社に作品を投稿していたという田中さん。一旦は大学に進学したものの、夢を捨てきれず大学を中退。絵を描く仕事の中から田中さんが選んだのは、一番現実的で入り口の広そうなアニメ業界だった。「"自分は描ける"なんて根拠のない自信は、入ってすぐにバキバキに折られました」と笑う田中さん。「でもそのおかげで自分に足りないものに気づくことができたんです。上手い人はもっとたくさんいる。よくアニメーターの仕事はキツいと言われますが、絵を仕事に出来ている時点で自分は幸せだと思いました。ネガティブな気持ちはまったくなかったですね」
     新人時代、絵のテクニックを学ぶために田中さんが実践したのは、絵が上手い先輩のゴミ箱を漁ること。「上手い絵が見たいんだったら、アニメ誌に載っている完成イラストを見ればいい。僕が見て盗みたかったのは、絵じゃなくて描き方。ラフや下書きには、完成形の絵からは学べない描き方のテクニックが詰まっているんです」と語った。
     そんな流れの中、講義の後半に行われたのは、事前に応募された受講者の『あの花』イラストを田中さんが目の前で生添削するというライブ作画修正コーナー。実際に下書きから絵を描き上げながら、作画する上で注意するべきポイント、上達の秘訣など、田中さんが先輩のゴミ箱から得た知識が惜しげも無く受講者に伝授された。以下、一部を箇条書きで紹介。「まずは全体のバランス、細部の仕上げはあと」「実物を見ながら描くべし」「絵を描くのはアニメーターの仕事のうちの4割。あとは勉強」「1枚絵が上手くてもダメ。アニメーターは動きを描く」「手や足の先など、目の行き届きにくい部分こそ大切に描くこと。そこで表現できるものは意外と大きい」「人から習った絵の描き方は、その人の描き方。目的意識を持ちつつたくさん絵を描いて、自分なりの方法論を見つけることが大事」等々、すべてを紹介するには残念ながらスペースが足りない程、様々なアドバイスが送られた。
     田中さんの講義から感じたことは、田中さんは今でも飽くなき好奇心と探究心を持ち続け、日々の仕事の中で常に新しい表現にチャレンジしているということ。「絵は表現手段に過ぎません。アニメーターの仕事は絵を描くことじゃない、その絵を使って何を表現するかなんです」と語った田中さん。講義の最後に、受講者から応募されたイラストが全員に返却された。そのすべてに田中さんが作監チェックした、作画修正が添えられていた。きっと、受講者にとって大切な宝物になったに違いない。

    原稿執筆:星 徹哉

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    クリエイター体験講座 23日
  • Program1

    アニメの企画をしてみよう! ~そんなにカンタンじゃないけどね~

    大澤信博(企画)

     アニメの制作においてプロデューサーが担う役割とは? また、ヒット作を生み出すための秘訣とは? 『ソードアート・オンライン』『アクセル・ワールド』などの企画・プロデュースを手掛ける株式会社ジェンコ執行役員、チーフ・プロデューサーの大澤信博さんが、普段なかなか知ることのできないアニメ企画についての貴重なお話を聞かせてくれた。
     まず、一口に「企画」といっても、講座のタイトルにもあるように“そんなにカンタン”なものではない。ひとつの企画を立案するまでに、アニメプロデューサーはランキング雑誌や書店およびアニメショップの店頭、またはインターネットの情報などを収集・調査し、どんな作品がユーザーに受け入れられやすいのか、徹底的に分析するという。しかも、それはあくまでもプロデュースのほんの入口にすぎず、企画を立案するだけでなく制作からビジネスにつなげることが重要な仕事だと大澤さんは語る。大澤さんが所属するジェンコにおいても、年間100?150本もの企画が立案されるなかで、実際に作品として成立するものは全体の10%程度とのこと。プロデューサーを志す人にとってはやや厳しい現実とも取れるが、「企画の終わりが制作・ビジネスの始まり」という大澤さんの言葉に参加者たちは改めて姿勢を正すのだった。
     以上の内容を踏まえ、講座の後半は「企画実践編」と題して、参加者に企画提案書を実際に書いてもらうことに。持ち帰り不可を条件に、特別に配られた極秘資料を元に参加者が挑むテーマは「オリジナルアニメの企画」。用紙が配られると同時にさっそく記入を始める人や資料をじっくり読み込む人、取り組み方はそれぞれだったが、ペンを走らせる表情はみんな真剣そのものだった。
     講座の終わりに、参加者の書いた企画について大澤さんは「資料も熱心に分析してあり、ジャンルも多岐に渡り、また女性による企画はとても新鮮なものがある」と総評。その上で「企画の極意」としてプロデューサーに必要なものに「スキル」「経験」「センス」「人脈」の4つを挙げた。しかし、それらはあることを実現するための手段でしかない。最も大切なものは「欲望」であると話す。自分が見たいものを実現させたい、あるいは単純にお金持ちになりたい、有名になりたいといった欲求、欲望こそが作品を生み出す原動力になると大澤さんは力説。故に、ここまでの話とは逆説的になるが「資料やマーケティングなどを参考にしないことも大事」といい、ただひとり資料を見ずに企画を書いたという参加者には「それはあなたの企画なので、大事にしてください」とエールを送っていた。
     アニメを企画・プロデュースするための方法はいくつかあるが、アニメを好きになってくれるファンやユーザーの欲求や欲望に応えるためには自らの欲望を燃やさなければ太刀打ちできない。それこそが目的であって、それを実現するために「スキル」「経験」「センス」「人脈」が必要であり、「手段と目的を取り違えてはいけない」という大澤さん。「自分は何を作りたいか?」というところからすべてが出発するという、ものづくりの原点たる精神を教えられたような講座となった。

    原稿執筆:仲上 佳克

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  • Program2

    原作・脚本 中島かずき講演『キルラキル』を織り上げるまで。

    中島かずき(脚本)

     2014年3月末まで放送されたTVアニメ『キルラキル』。この作品で原作・脚本・シリーズ構成を担当したのが、脚本家の中島かずきさんだ。劇団☆新感線で座付作家を務め、アニメ作品では『キルラキル』と同じく今石洋之監督とタッグを組んだ『天元突破グレンラガン』などで知られる中島さんが、どのように『キルラキル』を織り上げていったのか? アニメ制作会社トリガーの取締役・舛本和也さん、アニプレックスのプロデューサー・鳥羽洋典さんを交えて、さまざまな舞台裏が語られた。
     まずは中島さんの経歴を簡単に紹介。高校から演劇を始め、大学卒業後に出版社に就職するのと並行して劇団☆新感線に参加したという中島さんは、「完全に独学」で脚本の書き方を学んだという。また、漫画雑誌の編集者を務めていた頃に、週に一度のペースで作家とミーティングをしながら話を作り上げていった経験が自信へとつながり、「脚本家としての最初の足腰はそこで作られた」と振り返る。そして、初めてアニメのシリーズ構成を手がけたOVA『Re:キューティーハニー』(2004年)で出会った今石監督と意気投合したことが『天元突破グレンラガン』、そして『キルラキル』へとつながっていく。
     この講座では中島さん流のネーミングへのこだわりをはじめとする『キルラキル』の創作秘話がいくつも明かされた。脚本で一度書き上げたセリフでも「ライブ感を重視」するために絵コンテやアフレコの段階でどんどんブラッシュアップしていったという話では「アニメの制作現場では基本的にタブーとされていること」と念を押しながらも、壇上からも伝わってくる熱気に参加者もどんどん引き込まれていく。また、「自分たちが面白いと思うもの、趣味をどこまで貫けるか」という意気込みで取り組んだ『キルラキル』は、出版社や劇団☆新感線で培ったノウハウをすべて詰め込んだ集大成的作品とのことだ。
     講演後の質疑応答では、事前に募集された質問や会場の参加者からの率直な質問に快く答えてくれた中島さん。実際に高校や大学で演劇の活動をしているという人も多く来場しており、「脚本を書いていて断念することが多々ある」という悩みを打ち明けた人には「最初から上手く書けるわけはないから、続けていくしかない」「誰かに読んでもらうことで経験を積んでいくべき」という真摯なアドバイスが送られた。脚本家を志望する人にとって有意義な話をたっぷりと聞くことができたこの講座は「この世界をめざすのであれば、まず書き終えてください。どんなものでもいいので、エンディングまで書き通してみる。それが栄養になりますので、つらいでしょうが書き続けてほしいと思います。頑張ってください」という中島さんからの熱いメッセージで締めくくられた。

    原稿執筆:仲上 佳克

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  • Program3

    『キルラキル』を使った音響講座

    岩浪美和(音響監督)

     作画や演出、脚本などと並んで、アニメーション作品を構成する欠かせない要素である「音」。この講座ではアニメにおける音のすべてを司る役職である音響監督の岩浪美和さんを招き、岩浪さんが実際に手がけた作品『キルラキル』を題材に、音響監督の仕事やアニメの中でどのように音が使われているかという興味深い話を聞くことができた。
     まず、岩浪さんはアニメの音は「セリフ」「SE(効果音)」「音楽」の3種類に分けられると説明。このうちセリフはアフレコスタジオにて、実際に声優が演じることにより収録されるわけだが、むしろ収録後が音響監督の腕の見せ所でもあるという。セリフのボリュームやタイミングを調整したり、ディレイやリバーブ(いわゆるエコー)をかけたりと、さまざまな工夫を凝らしているとのこと。ここで岩浪さんは講座のために特別に用意した『キルラキル』第18話の、セリフのみの映像を公開。音楽やSEがない状態だとセリフにかけられた効果がよくわかり、参加者も目ならぬ耳から鱗だったのではないだろうか。
     続いてはSEだが、海外の劇場アニメでは1作品につき100名程度がSEに携わっているのに対して、日本のアニメは基本的にひとりが1作品を担当しているという。その分「個性が出る」のが日本のアニメの良いところという岩浪さん。アニメにおけるSEは「心のリアルを音にする」として、例えば光のきらめきや流れる汗など、本来ならば音がしないようなところでも音を入れるのがポイントとのこと。ここでは先程と同じ映像を、今度はSEのみで上映。普段であればセリフや音楽にかき消されている音も聴こえてくるのが新鮮で、「こんなに音が入っているなんて思わなかったでしょう?」と岩浪さんもうれしそうな様子。なお、たとえ聴こえないような音であっても「必ず感じている」とのことだ。
     最後は音楽だが、ここが音響監督の個性が最も出る部分だという。作曲家に音楽を発注することから始まり、出来上がった音楽をどのように映像に合わせていくかで頭を悩ませる。この講座で例として使用されている『キルラキル』第18話の冒頭部分では約6分間で7?8曲も使っているといい、タイミングの合わせ方にも細心の注意が払われているそう。非常に大変な作業だが、これが「いちばん面白い」と岩浪さんは語る。また、音楽の付け方には基本として「キャラに付ける」「状況に付ける」「感情に付ける」の3パターンがあるとのことなので、どういう意図で音楽が付けられているのか、自分で考えながらアニメを見てみるのも面白いかもしれない。  我々が何気なく聴いているアニメの音にも豊かな世界が広がっていること。「音響」の持つ限りない魅力を伝えてくれた岩浪さんに、参加者からは盛大な拍手が贈られた。

    原稿執筆:仲上 佳克

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